花の色は 移りにけりな いたづらに

我身世にふる ながめせしまに

小野小町

花の色もすっかり色あせてしまいました。

降る長雨をぼんやりと眺めいるうちに。

(わたしの美しさも、その花の色のように、こんなにも褪せてしまいました)

花の色は – 小野小町

これやこの 行くも帰るも 別れては

知るも知らぬも あふ坂の関

蝉丸

       

これがあの有名な、(東国へ)下って行く人も都へ帰る人も ここで別れてはまたここで会い、知っている人も知らない人も、 またここで出会うという逢坂の関なのだなあ。

これやこの – 蝉丸
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは 在原業平朝臣     (川面に紅葉が流れていますが)神代の時代にさえこんなことは聞いたことがありません。 竜田川一面に紅葉が散りしいて、 流れる水を鮮やかな紅の色に染めあげるなどということは。
ちはやぶる – 在原業平朝臣

瀬を早み 岩にせかるる 滝川の

われても末に 逢はむとぞ思ふ 崇徳院

川の流れが早いので、岩にせき止められた急流が時にはふたつに分かれても、

またひとつになるように、わたし達の間も、

(今はたとえ人にせき止められていようとも)後にはきっと結ばれるものと思っています。

瀬を早み – 崇徳院
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも 阿倍仲麻呂       大空を振り仰いで眺めると、美しい月が出ているが、 あの月はきっと故郷である春日の三笠の山に出た月と同じ月だろう。 (ああ、本当に恋しいことだなあ)
天の原 – 阿倍仲麻呂

わたの原 八十島かけて 漕き出でぬと

人には告げよ あまのつりぶね

参議篁

はるか大海原を多くの島々目指して漕ぎ出して行ったと、 都にいる親しい人に告げてくれないか、 そこの釣舟の漁夫よ。
わたの原 – 参議篁
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける 紀貫之 さて、あなたの心は昔のままであるかどうか分かりません。 しかし馴染み深いこの里では、花は昔のままの香りで美しく咲きにおっているではありませんか。
人はいさ – 紀貫之
 

田子の浦に うち出でてみれば

白妙の

富士の高嶺に 雪は降りつつ

山部赤人

田子の浦に出かけて、遙かにふり仰いで見ると、 白い布をかぶったように 真っ白い富士の高い嶺が見え、 そこに雪が降り積もっ ている。 (百人一首より)
田子の浦に-山部赤人(百人一首)

春過ぎて  夏来にけらし 白妙の

衣ほすてふ  天の香具山

(持統天皇)

もう春は過ぎ去り、いつのまにか夏が来てしまったようですね。香具山には、あんなにたくさんのまっ白な着物が干されているのですから。
春過ぎて – 持統天皇(百人一首)

秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ

わが衣手は 露にぬれつつ

(天智天皇)

秋の田の側につくった仮小屋に泊まってみると、屋根をふいた苫の目があらいので、その隙間から忍びこむ冷たい夜露が、私の着物の袖をすっかりと濡らしてしまっているなぁ。
秋の田の – 天智天皇(百人一首)