原子力機構の放射能内部被曝事故を考える

この事故の内容や内部被曝の影響について検証した。被曝した人達の今後の健康状態を追跡することによって放射線の強さと健康被害状況の相関関係がある程度明らかになるであろう。
先ずは事故の内容から

原子力機構・内部被ばく2.2万ベクレル

(毎日新聞より転載)
日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センター(茨城県大洗町)で発生した被ばく事故。核燃料物質を点検していた作業員5人のうち、1人の肺からは過去に 例のない2万2000ベクレルのプルトニウム239が検出され、がんなど健康への影響が懸念される。原子力機構を巡っては安全管理体制の不備が指摘されて おり、当時の作業が適切に実施されていたのかなどの解明が今後の焦点になる。

体外排出まで影響

「被ばくした作業員の発がんリスクが今後上がるのは明白。影響を見る必要がある」。量子科学技術研究開発機構の明石真言(まこと)執行役は7日、作業員が搬送された放射線医学総合研究所(放医研、千葉市)での記者会見で述べた。
今回の事故は、鼻や口などから放射性物質を体内に取り込んだ内部被ばくのケースで、外部被ばくによるJCO臨界事故(1999年)とは異なる。JCO事故では、作業員2人が6~20シーベルトの外部被ばくをして死亡したが、これは一瞬で大量に被ばくしたため急性症状が出た。内部被ばくは体内にとどまった 放射性物質が放射線を出し続けるため、体外に排出されるか、放射線が弱くなるまで人体に影響を及ぼし続ける。
今回、放射性物質を最も多く取り込んだ50代男性の肺からは、2万2000ベクレルのプルトニウム239(半減期2万4100年)と、220ベクレルの アメリシウム241(同432年)が検出された。これらは、放射線の中でも人体への影響が大きいアルファ線を出すため、肺が受ける被ばく線量は大きい。暫定評価では、被ばく線量は今後50年間で12シーベルト、1年間で1・2シーベルトと推定された。放射線業務従事者の法定許容限度は年50ミリシーベルト (1シーベルトの20分の1)だ。 放医研は5人の治療のため、放射性物質の体外への排出を促す「キレート剤」を点滴し、効果を見極める。JCO臨界事故 の際、作業員の治療に当たった前川和彦・東京大名誉教授(救急医学)は「1、2週間のうちに、プルトニウムがどれぐらい排出されるか見極める必要がある」 と話している。

放射性物質の食物基準値

厚生労働省が食物における安全基準値を定め、基準以上の放射性物質を摂取しないようにしている。

基準は以下の通りである。

平成24年4月から、現行の基準値を設定しました。
食品群   基準値(単位:ベクレル/kg)
一般食品    100
乳児用食品   50
牛乳      50
飲料水     10

基準値の一般食品を100グラム食べるとすると10ベクレル。今回の事故はその2200倍に当たる。

福島原発事故の肉牛餌の汚染

福島原発事故で肉牛の餌である藁の汚染が大問題になったが、その汚染度は1キロ当たり583〜1万2984ベクレルのようだ。この汚染藁を食べた肉牛がどの程度放射能を体内に蓄積されるかは不明であるが、藁の汚染度よりは低いのでないだろうか。

人体への影響

人体への影響はシーベルトという単位で議論される。

今回の事故で吸入した放射性物質の多くは数日で体外に排出されるが、一部は体の一部となって継続的に人体に放射能を浴びせ続けることになる。その影響は今後1年間で1.2シーベルト、50年間で12シーベルト程度と推定されている。

昔のJCO事故では一度に16−20シーベルト被曝した作業員が83日後に死亡。6−10シーベルト被曝した作業員は211日後に死亡。1 – 4.5シーベルト被曝した作業員は、一時白血球数がゼロになるが、骨髄移植を受け回復し、その後退院している。

ICO事故は一度の外部被曝、今回は長期の内部被曝と状況は異なるが、健康を追跡することによって、内部被曝の健康への被害状況がある程度分かるであろう。

なお、放射線業務従事者の法定許容限度は年50ミリシーベルとなっている。今回の事故ではこの24倍の影響を受けることになる。