(NHKニュースより転載)

トランプ大統領 インフラ投資に1兆ドル 初の議会演説で

アメリカのトランプ大統領は初めて議会で演説し、1兆ドル(日本円で110兆円余り)に上る国内のインフラ整備を目指すとともに、太平洋地域などの同盟国や友好国に対し地域の安定のため公平な負担を求める考えを示しました。

トランプ大統領は現地時間の2月28日午後9時(日本時間の1日午前11時)すぎから、議会上下両院の合同会議で今後1年間の施政方針を示す初めての演説を行いました。

この中で、まず、トランプ大統領は「アメリカは自分たちの市民を第一にしなければならない。そうした時にのみアメリカを再び偉大にできる」と述べ、国益を最優先に掲げるアメリカ第一主義で取り組む姿勢を示しました。そして、就任後、TPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱したことを取り上げ、成果として強調しました。

そのうえで、「雇用と賃金を改善し、国をより安全にするために真の移民制度改革が必要だ」と述べ、不法移民対策としてメキシコとの国境沿いに早期に壁の建設を始めるとともに、近く入国管理を厳格化するための新たな措置を取り、テロ対策を徹底する方針を示しました。

また、過激派組織IS=イスラミックステートについて、同盟国やイスラム諸国の友好国と協力して壊滅を目指す姿勢を強調しました。

さらに、法人税の税率の引き下げなど大規模な税制改革に取り組むとともに、国内のインフラ整備に官民合わせて1兆ドル(日本円で110兆円余り)に上る投資を実現するため、議会に法整備への協力を求める方針を示し、数百万の雇用の創出につながると訴えました。

一方で、オバマ前大統領が推進した医療保険制度改革、いわゆるオバマケアについては撤廃し、別の制度に替えるよう議会に求めました。

また、軍の再建のため国防費の大幅な増額を目指す方針を示したうえで、「われわれのパートナーの国々には軍事的な活動での役割や公平な負担の支払いを期待する」と述べ、ヨーロッパや中東、それに太平洋地域の同盟国や友好国に対して、地域の安定のため公平な負担を求める考えを示しました。

そして最後に、「ささいな闘いの時間は過去のものとなった。われわれには夢を共有する勇気が必要だ」と述べて、対立よりも、ともにアメリカの繁栄を目指すべきだと融和を訴え、演説を終えました。

米第一主義

トランプ大統領は演説の冒頭で、「私は今夜、団結と強さのメッセージを伝えるためにここにいる。われわれが今、目の当たりにしているのは、『アメリカの精神の復活』だ。われわれの同盟国は、アメリカが再び世界をリードしていく様子に気付くだろう。そして、敵、味方を問わず、すべての国が強く、誇らしく、そして自由なアメリカの姿を見いだすだろう」と述べ、今回の演説のテーマとしていた『アメリカの精神の復活』に言及しました。

また、「アメリカは自分たちの国民を第一に考えなければならない。そうした時にのみアメリカを再び偉大にできる」と述べ、国益を最優先に掲げるアメリカ第一主義で取り組む姿勢を示しました。

そして、トランプ大統領は演説の終わりにさしかかると、「われわれの展望は一致して取り組むことによってのみ成し遂げられる。ささいな闘いの時間は過去のものとなった。われわれには夢を共有する勇気が必要だ。すべての国民が『アメリカの精神の復活』を受け入れてほしい」と述べて、対立よりも、ともにアメリカの繁栄を目指すべきだと融和を訴えました。

税、インフラ、規制、通商

演説でトランプ大統領は、「アメリカ国内で、ビジネスをしやすくする一方で国外への移転を難しくすることで、アメリカ経済のエンジンを再び始動させなければならない」と訴えました。

税制改革については、「法人税の税率を引き下げる大規模な税制改革に取り組むととともに、中間層の税負担を大幅に軽減する」と述べましたが、具体的な税率については明らかにしませんでした。

また、国内のインフラ整備に官民合わせて1兆ドル、日本円で110兆円余りに上る投資を実現するため、議会に法整備への協力を求める方針を示し、数百万人の雇用の創出につなげると訴えました。

そして規制緩和をめぐっては「雇用を奪うことになる規制を大幅に削減するための取り組みに着手した」と述べ新たな規制を導入する場合、2つの既存の規制を撤廃する考えを示しました。

このほか通商政策では、TPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱したことを取り上げ、みずからの成果として強調しました。そのうえで、「NAFTA=北米自由貿易協定が承認されて以来、製造業の雇用は、4分の1以上失われた。また、中国がWTO=世界貿易機関に加盟してから6万の工場が失われた」と述べ、中国やメキシコに対して抱える多額の貿易赤字の削減を目指す考えを示しましたが、日本については言及しませんでした。

一方、アメリカの大手企業とならんで通信大手のソフトバンクグループの名前も挙げて、多くの企業が、大統領選挙のあとアメリカ国内に投資や雇用の創出を発表したとして、アメリカ経済へのみずからの貢献を強調しました。

国内テロ対策

トランプ大統領は演説で、「われわれの義務はアメリカ国民を守ることだ。テロ行為などで有罪判決を受けた大多数の人は海外からアメリカに来ている。アメリカにテロの拠点を築きわが国を過激派の聖域にすることを許すわけにはいかない。だからこそ、われわれは入国審査の改善を進めており、まもなくわが国を安全にするための新しい措置を取る」と述べました。

中東など7か国の人の入国を一時的に禁止する大統領令が裁判所の仮処分で執行されない中、トランプ大統領は国の安全を確保するための新たな大統領令に署名する考えを示しており、その内容が注目されています。

壁建設、不法移民政策

トランプ大統領は演説で、「私の政権は、移民政策と国境警備について、アメリカ国民の願いに応えていく。移民対策の法律を実行していくことで賃金の上昇につながり、失業者を救済し、われわれの社会がより安全になる。このため、南部の国境沿いに巨大な壁の建設をまもなく始める」と述べ、メキシコとの国境沿いにすみやかに壁を建設すると改めて訴えました。

そのうえで、「われわれの社会を脅かすギャングや麻薬の密売人、犯罪者を排除する。選挙戦でも約束したように、悪い連中は追い出す」と述べ、不法移民対策の強化を着実に進める姿勢を強調しました。

また、トランプ大統領は、不法移民に殺害された警察官の遺族たちを議会演説にゲストとして招待し、演説の中でも紹介したうえで、「不法移民をわれわれの国に入れるべきではない」と訴えました。

オバマケア

演説でトランプ大統領は、オバマ前大統領が推進した医療保険制度改革、いわゆるオバマケアについて、保険料が全米で値上がりしているとして「持続可能でなく、崩壊している」と指摘しました。そして、「私は議会に、選択肢を拡大し負担を減らすとともに、よりよい医療保険を提供するためオバマケアを撤廃し、別の制度に変えるよう求める」と述べました。

そのうえでトランプ大統領は「行動が必要だ。すべての民主党と共和党の議員に対し、オバマケアの大惨事から国民を守るためにともに取り組むよう求める。すべての問題が解決可能だ。民主党と共和党はアメリカと国民のために結束すべきだ」と述べ、オバマケアを撤廃し別の制度に変えるため与野党に協力を求めました。

教育政策

トランプ大統領は演説で教育政策について、「教育は市民の権利に関わる問題だ。アフリカ系やヒスパニック系など、不利な環境で育つ子どもたちが公立や私立の学校、在宅学習などさまざまな選択肢の中から、自分たちにあった、教育の場を選べるようにするべきだ」と述べ、教育を受ける方法の選択肢を増やす法案を通過させるよう、両党の議員に呼びかけました。そのうえで、「すべての子どもが貧困の連鎖を断ち切り、大学などより高度な教育を受けられるようにしたい」と話しました。

IS、イラン

演説でトランプ大統領は、国防総省に対して、過激派組織IS=イスラミックステートの壊滅に向けた新たな計画を取りまとめるよう指示したと述べたうえで、「この卑劣な敵を地球上から消滅させるため、イスラム諸国の同盟国や友好国などとともに取り組む」と述べ、中東各国と協力して軍事作戦を加速させる考えを示しました。

また、トランプ大統領は、イランが進める弾道ミサイル計画を非難し、個人や企業に対して経済制裁を科したとしたうえで、イランと敵対するイスラエルとの強固な同盟関係を再確認したと述べ、イスラエルとの関係を重視する姿勢を強調しました。その一方で安全保障面では、国防総省が優先課題に挙げているロシアと中国、それに北朝鮮については、演説で直接言及することはありませんでした。

女性活躍、子育て支援

トランプ大統領は、演説で女性の活躍について触れ、「女性起業家たちが、経営に必要な市場へのアクセスやネットワーク、起業のための資金を確保できるよう支援する協議会をカナダとともに立ち上げた」と述べ、女性経営者を後押ししていく方針を明らかにしました。

また「新たに子をもうけた親が、有給の育児休暇を取得できるよう支援するほか、保育施設などを利用しやすく、また費用も手ごろにするべく民主・共和両党の議員とともに取り組んでいきたい」と述べ、子育て支援にも取り組む姿勢を示しました。

ロビー活動禁止

トランプ大統領は演説で、特定のグループの利益のために政府関係者に働きかけを行う、いわゆるロビー活動について、「われわれは行政機関の職員に対して、退職後5年間のロビー活動を禁止し、さらに外国政府のためのロビー活動を生涯、禁止した。これによって、政府の汚職の沼の泥水をさらい始めた」と述べ、大統領選挙の期間中から主張していた政府高官の倫理改革に、大統領就任後すぐに取り組んでいる事を強調しました。